国内リートの現状と見通しについて、18年第1四半期を記事にしました。
前回記事にした17年第3四半期の記事はこちらです。
J-REIT下落の原因と今後の見通し(2017年第3四半期)
リート指数下落の要因
下落が止まらない国内リートですが、7月14日の年初来安値1620ポイントをさらに下回り1611ポイント(11月15日現在)と1600ポイントが目前となっています。
16年4月の最高値より18%以上下落したことになります。
しかし、その後は株高がひと段落したことにより、反転。また足踏みとなっています。
(東証リート指数1年間のチャート)
11月には指数の下落により利回りが4.3%まで上昇し、割安感はさらに強まっています。12月末にに少し下落していますが、まだ4.1%を超える利回りとなっています。
値ごろ感が出たあと一旦は反転したリート指数ですが、とまらない下落の主な要因と今後の見通しを踏まえ、見ていきたいと思います。
世界的な株高による下落
前回の記事で書いたように、アメリカが利上げに政策を切り替えたこと。これによる金利上昇により、今後はドル高になるだろうと、ドル高の恩恵を受けるような株式に資金が回っています。
さらに、10月の衆議院選挙では自民党が大勝したため、株価が2万3千円付近まで上昇し、株に投資するため、換金されたことも要因の一つです。
下のグラフはトピックス(桃)と東証リート指数(青)の過去1年の比較ですが、株価の上昇により、リートは10%近い下落となっています。
つまり、株高=リート下落となります。12月はトピックスの上昇が緩やかになったため、11月のリート反転後は下落が少し緩やかになっています。
(東証リート指数とトピックスの比較(過去1年))
金融機関(日銀を除く)と投資信託の売り
金融緩和により、年間300億円のリートを購入している日銀は買い越しが続いていますが、17年に入ってから日銀を除く銀行が売り越しを続けています。
最も注目すべきは投資信託です。4月以降一貫して売り越しが続いています。
(投資主体別売買動向 出典:しんきん投信より)
銀行の売りについては、金融庁が3月15日に行った「業界団体との意見交換会」において「証券運用にかかるリスク管理」に関して次のように提起したため地銀を中心とする金融機関がリスク管理を厳格に行うようになったためです。
「銀行の運用がリスク資産に傾きすぎ、リーマンショックのような市場の激変に耐えるリスク管理ができていないからちゃんとリスク管理をしなさい」と金融庁が指摘したため金融機関が慌ててリートを売ることとなりました。
そして価格下落の要因として最も大きいのが、金融庁による顧客本位の方針により大きく売られているのが「毎月分配型」の投信です。
手数料が高く、運用益を超えて特別分配金を出しているという投資信託が多いため金融庁のターゲットとなっています。
(出典:日本で大人気の「毎月分配型投信」に金融庁がダメ出しで投信の販売が急減? | THE PAGE(ザ・ページ))
グラフからわかるように、銀行の売りがひと段落し、個人投資家や海外投資家は売りから買いに転じつつあることから、投資家別では投資信託からの売りが一番の下落要因となっているようです。
J-REIT 18年第1四半期(1〜3月)の見通し
18年3月までの見通しについてです。
プラス材料
プラス材料はいくつもありますが、代表的なものをいくつか。
日銀による買い
金融政策の一環として、日銀が毎年900億円のJ-REITを買い入れており、10月は10回にわたり計129億円を購入しています。
当面はこの政策が継続されると考えられており、リート指数の下支えとなっています。
日銀の金融政策に関する記事です。
低空室率と賃料上昇
第1のプラス材料としては、好景気を背景とした、低空室率と増益傾向とです。
左下のグラフから予想分配金利回りが上昇していることがわかります。指数低下と賃料の上昇による影響です。
右下は空室率と賃料のグラフです。17年9月現在空室率は低下、賃料も上昇傾向となっています。
今後は④の数字の位置に向かって、賃料が増加することとなります。その要因としては、
- 好景気を背景とした就業者の増加
- オリンピックを控え、緩やかな不動産価格の上昇が続く
が、あげられます。
(出典:しんきんアセットマネジメントリート市場の現状と見通し2017年11月より)
この動きは続いており、年末は上昇が止まるという見方もあったようですが、止まることなく上昇しています。分配金が増えることになりますので、指数下落ではない利回り増の要因になります。
低い金利
金利については、日本の金利が海外ほど上昇するリスクを持っていないため、海外リートに比べJ-REITは下落リスクが少ないのが現状です。
これは、日本の物価上昇が弱く、当面は低金利が続くと考えられているからです。
そして、この低金利により、借り換えだけでも、利益が出る状況となっています。
実際に、阪急リート投資法人が、9月に行った30億円の借換えでは、調達期間が5年から10年に長期化しただけでなく、金利1.33%から0.78%になり、この借換えだけで分配金は年間28円増加したそうです。
(出典:「最高益更新」銘柄が増加しているJ-REIT市場/アイビー総研 関 大介 - JAPAN-REIT.COM)
利回り商品としての魅力増加
好条件が重なり12月25日の分配金利回りは4.1%を超えています。さらに最高益を更新する銘柄が多いとみられており、今後も分配金の総額は増えていきます。
前述のとおり、個人投資家と海外投資家の売りはすでにピークが終わっていますので、毎月分配型投資信託からの売りが一巡した後は、利回り商品として買われる展開となると考えられます。
マイナス材料
次はマイナス材料です。プラス要因を考えると、北朝鮮次第でしょうか。
北朝鮮による地政学的リスク
北朝鮮からのミサイル発射は9月からありませんが、米国によるテロ支援国家の指定との情報もあり、緊張が高まり、偶発的なものも含め、軍事的な衝突がおこれば、一気にリスクオフの流れとなります。
リートは大きく下落する要因となります。
続く投資信託からの売り
投資信託からの売りは、一巡するまで続くので、終わりが来るまでは下落基調となりそうです。いったいいつまで続くのか私にはわかりません。
実際に投資信託からは11月も相当の売りがあったようです。
空室率の一時的な上昇
18年はオフィスが供給され、一時的に空室率が上昇すると言われています。これは18年は3.0%程度までの上昇と予想されており、貸手優位の状況が続きます。
ただし、17年末には空室率が上昇し賃料の上昇ペースが落ちると言われていたものの、そのような動きはありませんので思ったほどの影響はないのかもしれません。
まとめ
下落の要因は、株の上昇と投資信託からの売りですが、リートは最高益を更新しているものが多く、投資信託からの売りが一巡した後は持ち直すものと予想しています。
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