国内リートの現状と見通しについて、今年2017年第3四半期を記事にしました。
最新の記事はこちらです。J-REIT下落の原因と2018年第1四半期の見通し - ほったらかし投資の達人
リート指数下落の要因
下落が止まらない国内リートですが、一時期は2000ポイント近くあった東証リート指数も1700ポイントを割り込み1655ポイント(7月19日現在)となっています。
(東証リート指数1年間のチャート)
下落が続いたことにより利回りが4.12%まで上昇しており割安感がだいぶ出てきました。
値ごろ感が出てきたリートですが、この下落の主な要因について今後の見通しを踏まえて1つずつ見ていきたいと思います。
ドル高への期待による下落
アメリカが金利政策で利上げに転じたため、今後はドル高になるだろうと、ドル高の恩恵を受けるような株式に資金が回っています。これがリート指数下落の1つの要因となっています。
下のグラフはトピックスとリート指数の過去1年の比較ですが、株価は25%近く上昇していますが、リートは10%を超える下落となっています。
この要因によるリートの不調は今後も継続的に続くと考えられます。
金融機関(日銀を除く)による売り
政策として年間300億円のリート購入を決めている日銀は買い越しが続いていますが、17年に入ってから日銀を除く銀行が売り越しを続けています。4月〜6月の売り越しが74億円(日銀除く)、さらに投資信託も同時期に370億円の売り越しとなっています。
(出典:しんきん投信より)
これは金融庁が3月15日に行った「業界団体との意見交換会」において「証券運用にかかるリスク管理」に関して次のように提起したため地銀を中心とする金融機関がリスク管理を厳格に行うようになったためです。
- 貸出業務の収益性が低下する中、多くの金融機関にとり証券運用の重要性が増しているが、地域銀行がとっている金利リスクは、自己資本対比で主要行の2倍超。
- 28 年 11 月以降、市場の潮流に変化が見られる中、足下の決算の数字 を良くするために多大な証券のリスクを取っている金融機関がある。
- 証券運用から確実に収益を上げようとするのであれば、リスクテイクに見合う運用・リスク管理体制の確立が必要。
- リーマンショックのような市場環境に大きな変動がある度に、リスク管理が不十分な金融機関が多大な打撃を受けたことを忘れてはならない。
つまり、「リスク資産による運用割合が大きすぎるため、リーマンショックのような市場の激変に耐えるリスク管理ができていないからちゃんとリスク管理をしなさい」と金融庁が指摘したため金融機関が慌ててリートを売っているようです。
毎月分配型投信の販売自粛
金融庁が顧客本位の姿勢を打ち出し、そのターゲットとなっているのが「毎月分配型」の投信といわれています。販売側にとっては手数料が高く収益性が高く、購入側としては分配金が毎月得られるというメリットがありました。
しかし手数料が高く、分配金も運用益を超えて自分が振り込んだ資金が戻ってくる特別分配金を出しているという投資信託が多いため金融庁のターゲットとなっているようです。(出典:日本で大人気の「毎月分配型投信」に金融庁がダメ出しで投信の販売が急減? | THE PAGE(ザ・ページ))
金利上昇への不安
次に米国や欧州での金利上昇により日本の金利も上昇し、物件の利回りが悪くなるのではないかという見通しによる価格の下落です。
この日本の金利上昇については、日銀、5カ月ぶりに指し値オペを実施-長期金利の上昇抑制 - Bloombergにあるように、上昇局面で日銀がオペをしっかりおこなっているため、市場では0.1%が上限と捉えているようです。ただし、世界の金利が上昇しているため大きく下落する余地もないようです。
また、20年、30年といった超長期金利は今後も上昇の余地があるとされています。
J-REIT 第3四半期の見通し
国内リートの見通しとしては、ピークアウトしたとは思いますが、利回りが4%を超と利回り商品としての魅力が出てきました。
今後もリートの増益傾向が続くことから中長期的には価格が上昇すると思われます。
ただし2017年第三四半期にあたる7月〜9月は例年リートの価格が低迷する時期ですので、価格の下落もありえます。その場合、積立投資を行っている方には我慢の買いの局面となりそうです。
賃料と空室率の見通し
18年に向けてオフィスビルの供給増加により空室率は微増の見通しですが、景気と人手不足を背景に就業者が増加し、空室率は安定して推移すると見られています。
(出典:三井住友アセットトラスメントマーケットリポートより)
賃料については緩やかな上昇基調が続いています。グラフをみると2011年の②を底に現在は空室率が低下し③の局面にきています。今後経済が順調位推移すれば、もう少し空室率が下がり、賃料が一段と上昇する④の局面に移行することとなります。
(出典:しんきんアセットマネジメントリート市場の現状と見通し2017年7月より)
金利の見通し
金利については、前述のとおり、日本の金利が海外ほど上昇するリスクを持っていないため、海外リートに比べJ-REITは下落リスクが少ないのが現状です。
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